■デュアルバルブとは |
自動車のボディ、パソコンやスマートフォンの部品、硬貨など、多種多様な部品の加工にプレス機械が使用されています。プレス機械は加圧する動力源によって機械式プレス、油圧プレス、サーボプレスに分かれており、デュアルバルブは機械式プレスに組み込まれています。
機械式プレスは、モーターで駆動するフライホイールの回転力を、クラッチを経由してクランクシャフトに伝えて直線運動に変換することで金型を上下させ、金属板を挟みつけて加工を行います。デュアルバルブは、クラッチやブレーキの制御システムに組み込まれ、機械の操作をより安全にコントロールする役割を果たしています。まさに機械式プレスの“心臓部”に相当するといえます。
■新型デュアルバルブ – TX-A |
近年、機械式プレスにおけるデュアルバルブのニーズも変化してきています。作業者の安全を守ることを目的に、機械式プレスを確実に停止させるための応答速度や故障時の残圧低減などの基本的な機能向上に対する要求が高まっています。また、持続可能な社会の実現に向けた取組みが産業界において不可避なテーマとなり、環境配慮設計に関する要求も急速に増加しています。
こうした状況を見据え、弊社では1979年のリリース以来、約40年にわたり提供してきた現行製品のさらなる安全、そして環境にやさしい製品を実現するために、抜本的な見直しを決断。「世界No.1の性能」を目標に新製品の開発に着手し、2020年5月にリニューアルした新型デュアルバルブ 形 TX-A(以下、TX-A)をリリースしました。
企画・開発にあたって重視した点は大きく三つあります。
1. 安全性の向上
より迅速で安全な作動を実現し、同等の大きさと価格帯の製品群の中で最高の性能を目指しました。機械式プレスは空気圧を利用して、クラッチからの動力伝達を操作しますが、緊急時には迅速に空気圧を排出し、クラッチからの動力伝達を遮断することが求められます。新モデルとなる「TX-A」では、従来のクロスフロー流路構造を進化させた独自のL型クロスフロー流路を開発しました。これにより片側バルブの故障などの緊急時に、より迅速に機械式プレスを停止させ、作業者の安全性を大幅に向上させました。
2. 環境配慮設計
TX-Aでは、プラスチック成形部品やアルミダイカスト部品を積極的に採用し、部品点数の削減を図ることで約22%の軽量化と約41.4%の省資源化を実現しました。また、主要な機械要素(コイル、パイロットバルブ、主弁)を一体で最適設計することで、消費電力を約50%削減し、エンドユーザーの製造現場における省エネルギーにも貢献しています。これにより、TX-Aは従来製品比で年間約51.7%のLC-CO2*1削減を実現しています。
3. デザインと機能の両立
従来のデュアルバルブは機能と性能が優先されていましたが、「TX-A」は機能と性能だけでなく、洗練された新しいデザインにもこだわりました。弊社製品の「グリーンゴールド」という製品カラーが「安全・高品質」のシンボルとして広く認知されてきましたが、「TX-A」では環境負荷を考慮し、デザインを一新。工業製品の分野で豊富な経験を持つデザイナーや、アズビルのデザインマネジメント部門の協力を得て、新しさ、精密さ、堅牢さを表現できる意匠を実現しました。また新しい製品デザインは、冗長化されたデュアルバルブ構成とクロスフロー構造を外観からもイメージでき、「形態は機能に従う」を体現しています。各方面から高く評価され、2021年度のグッドデザイン賞にも輝きました。
*1:LC-CO2(ライフサイクルCO2)製品のライフサイクル(企画~製作~運用~解体)にわたって排出する炭素(CO2)量の合計数値。